今月の表紙 「華為ショック」をもたらした米中関係の変化と日本
1 月に米ラスベガスで開催された展示会「CES2019」の華為技術ブース

● 文:渡辺 元・本誌編集長
●写真(この頁):吉井 勇・(株)ニューメディア 出版局長

 今月の表紙には、華為技術のロゴマークと米国、中国の国旗を組み合わせたイラストを掲載した。現在、米国や日本などその同盟国で華為技術やZTEなどの中国メーカーの通信機器を排除する政策が実施されている。日本の通信キャリアも5G基地局に華為技術、ZTEの製品を導入しないという方針を表明した。表紙のイラストは、このような中国のハイテク製品をめぐる米中のせめぎ合いを表現した。

 今月号には、この「華為ショック」の背景にある米国・中国の政策、予想される今後の展開などについて、「特集 華為ショック 華為排除と『米中新冷戦』の深層を専門家が読み解く」を掲載した。

 特集の中で、ワシントンの政策コミュニティーを熟知する国際政治学者の渡部恒雄・笹川平和財団 上席研究員のインタビューが、華為排除の背景にある米国の対中戦略と今後の見通しについて詳しく論じている。

 現在の米国防総省にも、先端の軍事技術によって軍事力の圧倒的優位性を確保しようとする相殺戦略のモデルが継続しているという。最新の軍事技術はスピンオフして民生品に利用され、米国経済の優位性にも寄与する。この第二次世界大戦後の米国の勝ちパターンが、急速に発展する中国の技術に脅かされている。そのため中国にハイテク分野でトップを走らせないように、中国による技術の窃盗をやめさせなければいけない、ということで米国防総省、USTR、副大統領、大統領、議会、産業界の思惑が一致したことが、今回の対中強硬策の背景にあるという分析だ。

 渡部氏は米国が2点を譲らないと指摘する。第一は中国に投資をした外国企業に中国が強要する技術移転を止めさせること、第二は中国が知的所有権を違法に盗むのを止めさせることだ。この2つについて中国が大幅に譲歩しない限り、米国は華為技術排除などの対中強硬策を長期的に継続し、さらに5G基地局製品以外にもAIなどの中国企業による最先端技術にも排除対象を拡大する可能性があると予測する。

 特集では中国側の思惑については、中国政府のシンクタンクである中国社会科学院社会学研究所の客員教授なども歴任し、中国の内政事情に詳しい遠藤 誉・東京福祉大学 国際交流センター長が分析している。遠藤氏は米国が華為技術の排除で狙っているのは中国の国家戦略「中国製造2025」の阻止であると指摘する。中国政府が中国製造2025で目指しているのは、半導体と宇宙開発での覇権だ。

 中国製造2025は半導体について、2025年までに70%、2035年までに90%、2045年までに100%の自給を目標にしている。中国は従来、半導体の90%を輸入に頼っていた。中国政府は「新常態(ニューノーマル)」という概念を掲げて、GDPの量的成長より質的成長で経済を持続的に発展させ、「組み立て工場」という中国の現状からの脱却を目指す。

 このような中国製造2025で重要な役割を担っているのが、華為技術子会社の半導体メーカーで、米クアルコムに技術力で迫るハイシリコン(海思半導体)だ。遠藤氏は米国の華為技術排除には、ハイシリコンを叩いて中国製造2025の達成を阻止する目的があると見る。中国は今後、米国製品に対する報復関税をやめて輸入を増やすなどの譲歩は行う可能性があるが、中国製造2025は中国共産党の一党支配体制が国民から支持されるために必須であり、中国は中国製造2025の目標達成のためには一歩も譲歩しないと予測する。

 このように米中関係が変化する中で、東アジアにおける日本の安全保障の形も変化を迫られる。日本の新防衛大綱策定に政府の「安全保障と防衛力に関する懇談会」委員として関わった国際政治学者の三浦瑠麗・東京大学講師は特集のインタビューで、相互核抑止が米中両国間の平和を成立させており、サイバーや宇宙空間で軍拡競争が進む一方で、陸上や海に展開する軍事力は相対的に重要性が低下し、米国は核抑止を前提として東アジアから次第に引いていくと述べる。

 三浦氏は、韓国は世論の趨勢からも今後しばらく米韓同盟を軽視する進歩派政権が続くと予想され、日本は米国の中国に対する最前線の砦として位置付けられるようになると指摘する。日本政府がオーストラリアとの軍事的協力を進めるのはそれに対応したものであり、このような日本の新しい方向性への転換については、2018年12月に策定された新防衛大綱でも謳われている。

 今回の「華為ショック」は、日本も巻き込まれている米中関係の変化を示している。日本がこの変化にどう対応していくべきなのか、われわれ国民は正確な情勢認識に基づいた議論を深めていかなければならない。

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